高齢化が急速に進む日本では、高齢者の介護に携わる介護士へのニーズが年々高まりつつあります。どこの介護施設でも慢性的な人材不足が生じているため、転職先の選択肢は豊富にあるといえるでしょう。
しかし、転職しやすい職種だからこそ、事前に情報をしっかりと集め、合理的で満足度の高い転職を行うよう努力することが大切です。
転職先がたくさんあるからと行き当たりばったりの行動を取っていると、キャリアアップを図れないまま年齢を重ねてしまう可能性があります。
そこで以下では、介護士を志す人に向けて、転職のメリットや転職活動で失敗しないためのポイントについて徹底解説していきます。
介護士への転職が人気な理由
将来的にも安定の業界である
日本が超高齢化社会に突入していくことがほぼほぼ確定しているのは、すでに周知の事実かと思います。
高齢者の方が増えるということは、全国のエリアに介護施設や在宅介護を必要とする人が増えるため、福祉業界の中でもとくに介護分野が廃れていく心配はないことを意味します。
また、介護業界の働き手も高齢化しているという実情もあるため、自分自身の将来を考えた時に、安定的に長く働ける環境に身を置きたいとのことで、介護業界を志望される方も多いです。
資格が一生ものなのでブランクからの復帰もしやすい
介護資格は、介護福祉士という資格だけではなく、介護職員初任者研修、実務者研修など、さまざまな資格があります。
時間や費用はかかりますが、一度資格を取ってしまえば、退職後、介護職の経歴にブランクがあったとしても活用できるので仕事復帰がしやすい業界でもあります。
現に、以前の介護経験と資格を活かし、結婚や子育てから復帰をする、別の業界で働いていたが介護業界に戻ってきたなど、さまざまな理由で仕事復帰を目指す方から相談が寄せられます。
行政による保障や支援が多い
処遇改善手当、コロナの一時給付金、感染症などに対する保障など、利用可能な国・自治体の支援は多いです。
ただ、整備されている保障や支援は、介護士の中でも情報を知っている方と知らない方がいますので、制度の変更や情報の共有に敏感になり、定期的に情報検索をしておく必要があります。
勤務可能な時間帯が多数ある
介護施設は、利用者の方の生活支援を行うため基本的に365日24時間稼働しております。
そのため、日勤のみ夜勤のみで働く人、子供が学校に行っている昼間の時間帯だけ働く人、昼も夜も働く人、土日祝日を中心に働く人などもOKです。休みを調整した多様な働き方ができる業界である点がメリットといえます。
ただ、特別養護老人ホーム、デイサービス・デイケア、ショートステイ、訪問介護、ケアハウスなど、働く職場によっても勤務形態はさまざまである上、労働環境や雰囲気もそれぞれ違いますので、しっかりと見極めることが必要です。
また、介護士の他にも、ケアマネージャーや生活相談員、介護事務職員、サービス提供責任者、福祉用具専門相談員、サービス管理責任者、医療機関勤務の看護助手など、介護に携わることのできる職種は多くあります。
自分に合う求人を見つけられるか不安という方は、転職エージェントに登録しキャリアアドバイザーに相談することで、あなたにマッチした求人を担当者から提案してもらえますので、ミスマッチにおびえる必要もありません。
人手不足=正社員で採用されやすいというイメージがある
介護業界を志す方の中には、業界の現状を踏まえて転職を希望される方もおります。
現に、介護業界は人材不足であるため、パートやアルバイト、契約社員での雇用に加え、良い人柄の方であれば、無資格・未経験の方でも正社員での採用のチャンスは十分にあります。
介護職員初任者研修という介護資格も3ヶ月という短期間の勉強で取得できますので、キャリアアップを目指すのも比較的簡単ではあります。
介護現場で生かせる異業種のスキル
介護現場では、介護スキルはもちろん必要ですが、それと同じくらい必要なスキルも多々あります。
- コミュニケーション能力
- グループ、チームで仕事を進める能力
- 臨機応変に対応できる応用力
上記にピックアップしたものはごく一部分で他にも複数ありますが、どれも介護職員にとって介護技術と同等に大変重要な要素です。
このようなスキルは、接客業や企業の営業職、医療業界など対人の仕事に限らず、幅広い業界、職種で必要になるものです。
介護資格や経験がどうしてもフォーカスされがちですが、現場で他のスタッフと連携を取ったり、ご入居者さんとの良い人間関係を築き信頼し合うには、資格・経験だけではダメです。
未経験、無資格で介護の仕事を始めていこうと考えている方も、自分にどのような強みがあるのか考えることが面接対策につながります。自信をもって挑戦していきましょう!
介護業界に転職後、後悔しないために確かめたいこと
介護士は、「介護」という特殊なサービスを提供する専門職です。
とくに初めて介護分野で仕事をするという場合、介護士という職業の特徴を踏まえたうえで、本当に転職に踏み切っても問題ないのか、慎重に歩を進める必要があります。
以下では、介護職へ転職される際によくある質問として、給与条件、自分のライフスタイルとの適合性、向き不向きの認識の3つを解説していきます。
介護士は平均月給は他の業種と比べると低い
厚生労働省の統計によると、福祉施設に勤務する介護員の平均月給は、常勤介護員で21万9,700円、ホームヘルパー(訪問介護員)が22万700円です。(2014年時点)
同時期における全産業の平均月給は32万9,600円ですから、それよりも10万円近くも安くなっています。[注1]
このように、介護士の給与待遇はほかの職に比べると低い傾向にあるため、とくに他職から介護士に転職する場合、条件次第では大幅に給与が下がる恐れがあるので注意が必要です。
しかし、高収入の施設はありますし、その職場の雇用形態や地域によって変動があるため、選択が重要になります!
求人応募の前に、介護施設ごとの介護士の年収・給料について知っておきたい方はこちらの関連記事を作成しましたので、興味があればぜひご覧ください。
[注1]介護職の給料なぜ安い 理解されにくい専門性
ライフスタイルに合っているか・合わせられるのか検討する
特養や介護付き有料老人ホームのような入所施設の場合、病院で勤務する看護師と同様、夜勤もある場合がほとんどです。
勤務開始時間が定期・不定期で変わることが多く、残業が発生する日もありますが、そのような勤務形態に対応できるようなライフスタイルであることが必要です。
たとえば子育てをしている方や、自宅で親を介護している方の場合、各家庭によってはそうした不規則な勤務形態に合わないことも考えられます。
以下の関連記事を掲載しておりますので、無理なく介護職を続けるために自分の生活スタイルに合っているかや家族との時間と両立できるかなど、転職する前に希望の職場を明確にすることをおすすめします。
仕事内容を理解したうえで自分が働いている姿がイメージできるか
介護士の役割は、要介護状態の高齢者の方の身体介護を行うことです。
高齢者の方と日常的に会話し、関係を維持できるコミュニケーション能力が求められます。
とくに20代、30代の人だと自分の親よりも年上の方を介助することになるため、祖父母と同居経験がない場合はとくに、戸惑うこともあるかもしれません。そのため、高齢者を労り、相手に寄り添える性格であることが大事です。
また、認知用の方の対応や入浴支援など利用者様や介護内容によっては、体力的負担がかかるため忍耐力が必要になります。
他職から介護士に転職する場合は、そういった仕事内容をしっかり理解し、自分は本当に介護の仕事を続けられるのか、選考でどのような点をアピールできるのか、問い直す必要があります。
是非、下記の関連記事を参考にしてみてください。
長く続けるための介護施設・事業所を見極める2つのポイント
介護士に転職する場合、転職先の選択を適切に行うことは極めて重要です。
転職してから「こんなはずではなかった」と後悔しないように、求人検索の際に各施設の情報をできるだけ収集・分析をし、納得のできる転職活動にしていきましょう。
とくに注目すべきポイントは、離職率が高い施設は避けるようにすること、研修制度が充実している施設を選ぶようにすることの2点です。
離職率が低い勤務先を見極める
介護労働安定センターの「介護労働実態調査(平成29年)」によれば、介護士の平均離職率は年間で16.2%です。一方、全産業平均の離職率は14.9%ですから、特別に介護士の離職理が高いというわけではないものの、平均値よりは高い数字です。[注2]
介護士の離職率は介護施設ごとに異なるので、実際に就職する際は、各施設の離職状況や勤続年数を調べることが大事です。
その場合、求人情報から以下の点を調べる方法があります。
- 現在の職員数に対して求人数や採用人数が多すぎないか(多すぎる場合、離職することを前提に雇用しようとしていることがある)
- 求人募集が年中出されている(入職してもすぐに辞めるので、常に募集している)
- 年間休日数が110日よりも少ない(激務が予想され、離職者が多くなりやすい)
ストレスなく長く仕事を続けられる職場環境が整っているか、とくに念入りにチェックすることが転職の際のコツです。
[注2]平成29年度 「介護労働実態調査」の結果
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h29_chousa_kekka.pdf
研修制度が充実していてキャリアアップを目指せる職場を探す
介護士は実際の業務経験を積み重ね、介護福祉士の資格を取得し、キャリアアップを目指せる職です。
施設によって違いがありますが、優良な介護施設は知識・スキルのある介護士を育てるための能力アップに対する理解が深く、資格取得の際の支援体制や先輩介護士による充実した研修制度を実施しています。
そのような仕組みのある施設であれば、就職後に介護士としての実力を高め、将来的なキャリアアップ、収入アップにもつなげることができるでしょう。
納得した内定先を探すために、介護士の教育体制はどうなっているのかも一緒に確認することをお勧めします。
介護士への転職を成功させるために事前準備をしっかりと行いましょう
慢性的な人手不足に陥っている介護業界では、介護士に対するニーズは高いです。
未経験者であっても受け入れてくれる介護施設は数多くあります。
しかし選択肢が多いからこそ、実際に転職する際には事前の情報収集・分析が必須となります。
その施設の給与条件や離職率、研修制度の充実度などをチェックし、自分の希望条件に合った施設なのかを見極めることで、スムーズな流れで転職活動に進めます。
また、介護士は夜勤が多く生活が不規則になりがちですし、何より介護という特殊なサービスを行う仕事であるため、向き不向きもあります。
長く続けられるかどうか、自分自身に問いかけることが必要です。
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