看取り介護を行う介護職のほとんどが、介護業務をする中で不安を抱えております。
理由としては、
- 初めての経験で何をしてよいのかわからない
- 入居者さんやそのご家族にとって、一番良い選択なのか不安
- 人の死に対する恐怖がある
など、人によって様々です。
今回は、不安な気持ちが少しでも軽減されるように、看取り介護に関して解説していきます。
看取り介護とは
看取りとは、延命治療などはせずに、自然に亡くなられるまでの過程を見守ることです。
そこに、介護を加えたのが看取り介護です。
つまり、延命治療などはせずに、人としての尊厳を残したままの介護サポート、生活援助を通して、身体的苦痛や精神的苦痛を和らげ、自然に亡くなられるまでの過程を見守ることが、看取り介護といえます。
ターミナルケアとは?看取りとの違い
ターミナルケアは医療現場で使われる言葉で、どのような治療で苦痛を和らげるかという医療視点になる点が、看取り介護とは異なります。
また、ターミナルケアは終末医療と呼ばれたりもします。
看取り介護は日常生活のケアが中心になりますので、ターミナルケアとは明確な違いがあります。
緩和ケアとは?看取りとの違い
緩和ケアは、肉体的な問題だけではなく、精神面へのケアも含まれます。
緩和ケアは、がんなどの病気の治療をしながら生活をしている人や、延命治療を受けている人も受けます。
看取り介護や、ターミナルケアは死の間際の対応として挙げられますが、緩和ケアは必ずしもそうではない点が違いです。
延命治療と平穏死
看取り介護を語るうえで、「延命治療」と「平穏死、自然死、尊厳死」の対局の考えを理解しておくほうがよいでしょう。
延命治療とは、胃ろうや点滴などで命を長らえさせることを言いますが、この行為自体が「人の尊厳を保てているのか?」という考えは、今も昔も存在します。
平穏死、自然死、尊厳死は延命治療とは逆で、ありのままを受け入れるというスタンスで、食事がとりづらい状況であっても必要以上にサポートをしないという考え方になります。
どちらが正解というわけではなく、その人にって正解が違うという考え方で、ご入居者やそのご家族の想いによって正解が変わります。
当然、介護をする側にとっても、それぞれの個人の考えを尊重する必要がありますので、日ごろからコミュニケーションを取っておくことが大切です。
看取り介護の現状
すでに病院などの医療機関では、在宅での医療ケアを推奨しており、昔と状況は変わりつつあります。
看取りについても同様です。
ですが、在宅での介護は家族の負担や安心安全という面から考えると、すべての家族が平等にケアができる環境は整っていないように思われます。
そのため、看取りまで対応する介護施設が増えているのが現状で、ご入居者やそのご家族には喜ばれる一方、介護士さんへの負担は増えているという状況にもあります。
今後は、看取り対応ができることは介護施設の当たり前として定着していくことになっていきますので、介護職員や現場で働く職員の心構えとして、看取り介護という考え方は、しっかり押さえておく必要があります。
介護職が感じる看取りへの不安の声
看取り介護の経験に関しては、一概に介護経験が長いから、看取り介護の経験も豊富とはなりません。
実際に不安に思う声を寄せられることが多いです。
1人夜勤の時に、入居者さんにもしものことがあったらと思うと心配です
1人夜勤の時に、入居者さんにもしものことがあったらと思うと心配です
いつもはチームで支えあって仕事をしていますが、時には1人で夜勤に入らなければいけないシフトもあります。
そのときに、もしも不測の事態が起こってしまったら、うまく対応できるだろうか?と考えてしまうと不安が大きくなってしまいます。
人の死に対する純粋な不安があります
人の死に対する純粋な不安があります
長年同じ施設で介護をしてきた入居者さんが、だんだんと衰えていく姿を見ると心が痛みます。
他に何かもっとできることはないのだろうか?と、考えたり、死に際して体にどのような変化がおこるのか、先輩に聞いたり、研修に参加して勉強をすることで、少しでも不安を押さえようとしています。
エンゼルケアに抵抗がありました
エンゼルケア(ご遺体をきれいに整える処置)に抵抗がありました
顔見知りの方とはいえ、亡くなってしまったあとにご遺体に触れることは、最初は抵抗がありました。
また、亡くなられてから数時間以内に処置をすませないといけないため、心づもりはできていると思っていたのですが、現実には戸惑いと抵抗が少なからずありました。
看取り介護への不安を軽減させるには?
実際に寄せられた看取り介護に対する不安の声のように、人は未知のものに対しては、過度に不安を抱いたり、恐怖心を持ってしまうものです。
基本的なことですが、経験、知識、看取り介護及び入居者さんへの理解、このあたりは、自分自身の中で整理をつけておくとよいでしょう。
看取り介護に対する知識の習得
看取り介護に関する知識を、ネットや本などなんでも大丈夫ですので、幅広く知識を持っておくようにしましょう。
また、現在働いている施設ですでに看取り介護を行っている実績があるならば、介護にあたった先輩から現場で起こったことを詳しく聞かせてもらうのも良いですね。
身近な人からの経験談は、自分事として置き換えやすいので条件整理にもつながります。
業務内容の把握
看取り介護をするうえで、実際に行う業務の内容を把握しておきましょう。
○○が起こったら○○をする、というように、全体の大まかな流れが分かっていれば、ある程度の心の準備はできます。
業務の全体像は、後述しますが、お勤めの施設や入居者さんによって、対応方法は十人十色ですので、参考程度にとどめておくことをおすすめします。
業務の際に記録をつけて振り返る
実際に看取り介護の対応をしているのであれば、自分だけの記録や日記をつけておくようにしましょう。
最期を迎えられる際の、心の準備にもつながりますし、今後も看取り介護に携わるのであれば、より詳細な経験として蓄積していけるからです。
また、あなた自身が他の誰かに体験談を聞いたように、逆の立場になったときに臨場感のある経験談として伝えられ、指導することもできます。
1人で悩まずチームで支えあう
何か不安に思ったり、心配ごとがある場合は、一緒に対応してくれる介護士さん、看護師さんに話をしてみましょう。
入居者さんや、そのご家族に満足してもらうために看取り介護をしているのですから、周囲に悩みを打ち明けて、よりよい対応ができるように努めましょう。
思わぬヒントを受け取れるかもしれませんよ!
看取り介護にどうしても抵抗がある場合は?
職場の管理者に、看取り介護の担当から外してもらえるように打診をしてみましょう。
抵抗がある、不安がある理由をしっかり伝えれば、気持ちを汲んでくれることは多いですよ。
また、看取り介護の担当から外れることができない場合は、転職も視野に入れましょう。
無理を続けていると、あなた自身の精神面にダメージが蓄積されてしまうので、お世辞にも良い状態とは言えません。
私たちスタッフ満足は、大阪、京都、兵庫、奈良で老人ホームを約50施設運営している株式会社スーパー・コートのグループ会社として、介護、看護に特化した人材派遣と人材紹介を行っております。
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看取り介護の流れ|介護施設で実際にある内容は?
看取り介護の流れを解説していきます。
時期によって対応することが変わってきますので、大きな流れを理解しておきましょう。
入所・適応期
看取り介護を受けるため、新しい施設に移る方も中にはいらっしゃいます。
その中で、まずは施設や人に慣れて、生活を再構築する期間となります。
併せて、適したケアプランの作成や、施設の方針などを、入居者様やそのご家族への説明をしていく時期でもあります。
安定期
入居者さんや、そのご家族との信頼関係を構築していく時期です。
通常の介護業務に加えて、日常の健康管理や維持、死の準備期間としての教育や、残り期間の活用を行います。
この時期は、一時的な体調の低下があっても回復が見込める時期でもあります。
そのため、入居者さんのやりたいことに時間を使ってあげることもできます。
不安定・低下期
この時期になると、体調の悪化や、身体機能の低下があった際でも、回復が見込めない時期に入っていきます。
また、普段の生活とは異なる身体的兆候が見られるのも特徴です。
看取り期に入る入らないの的確な評価・判断が求められます。
看取り期
看取り期に入ると、入居者さん本人やそのご家族と、死の迎え方についての希望を改めて整理する段階に入ります。
満足する死を迎えてもらうために、病状の説明や、ケアプランの立案、生活援助を行っていきます。
この時期に入ると、身体的な衰弱や、意識レベルの低下が見られ、状況が目まぐるしく変わることも少なくありません。
入居者さんだけではなく、介護する家族のケアも怠ってはいけません。
看取り後
入居者さんを看取ったあとの大事な対応があります。
看取り後の処置も施設の介護士さん、看護師さんが対応していきます。
内容としては、死亡確認と医師などへの連絡業務をすぐに行います。
また、亡くなられたあとの処理として、ご遺体をきれいに整える処置もあります。
看取り介護加算とは?
介護施設側で、看取りを実施できる体制になっているかどうか要件が定められているものになります。
算定要件は、特養、老健、有料老人ホーム、グループホームなど各施設形態によって異なっております。
介護士さんとして勤務する限りでは、この算定要件を頭に入れておく必要は全くありません。
ゆくゆくはケアマネージャーになることを視野に入れているのであれば、覚えておいて損はない知識ですね。
看取り介護加算(Ⅰ)
算定要件の施設 | |
---|---|
1 | 当該施設の看護職員、病院または診療所、指定訪問看護ステーションのいずれかの看護職員との連携で24時間連絡できる体制をとる |
2 | 看取りに関する指針を定め、施設入所の際に、入所者とご家族に看取りに関する定めた指針について内容の説明を行い、同意を得る |
3 | 医師、看護職員、ケアマネージャー、介護職員などが当該施設においての看取りについての協議を行い、指針について適宜見直す |
4 | 看取りに関しての職員研修を行う |
5 | 看取りケアは個室または静養室などを利用し、本人、ご家族、周囲の入所者に配慮する |
看取り介護加算(Ⅱ)
算定要件の施設 | |
---|---|
1 | 加算(Ⅰ)の要件を満たしている |
2 | 入所者に関し、配置医師と施設間で下記点の具体的な取り決めがある(緊急事態が起きた場合の注意点や情報連携の方法曜日、時間帯別の連絡手段や診察依頼時間) |
3 | 複数名の配置医師がいる、または協力関係にある医療機関の医師が、必要な際に24時間対応できる |
4 | 要件の2、3について、書面にし届け出ている |
5 | 看護体制加算(Ⅱ)を算定している |
看取り介護の不安を払拭して前向きな介護を!
初めてのことや、慣れないことには不安がつきものです。
1人で抱え込まず、まずは周りに相談することから始めていきましょう。
あなたが不安な気持ちでいると、入居者さんにまで不安な気持ちが伝わってしまうかもしれませんので、できるだけ明るく、楽しく前向きに介護をしていきましょう!
スタッフ満足の紹介
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